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矯正後に歯がグラグラ・・・これって大丈夫でしょうか?
全体矯正や部分矯正を終え、きれいになった歯並びに満足する中、歯がまだ動くという現象はめずらしいことではありません。でもやっと治療が終わったのに歯が動くと不安になることと思います。では矯正治療が終わったあとも歯が動くのは、心配ないのでしょうか。
矯正で歯が動く仕組みとは?
矯正治療はワイヤーやマウスピースを使って歯に力を加えることで歯が少しずつ動きます。では力を加えることでなぜ歯は動くのでしょうか。
まず知っておきたいのは、歯が動くのは「歯根膜」という薄い膜があることが前提であることです。歯と歯ぐきの間には歯根膜という膜が存在しています。歯根膜は噛んだ時の衝撃を和らげるクッションのような役割を持っていますが、歯が動く仕組みにも、この歯根膜が関係します。
歯根膜は非常に薄い膜ですが、常に一定の厚みを保とうとする性質があります。矯正装置によって歯に力を加えると、押されている側の歯根膜が圧迫されて縮み、逆に引っ張られている側の歯根膜は伸びてしまいます。そこで押されている側の歯根膜に「破骨細胞」という骨を溶かす細胞が作られ、歯槽骨を溶かします。いっぽう引っ張られている側にはすき間ができますが、「骨芽細胞」という骨を作る細胞が現れてこの隙間に骨を作り、歯を安定させます。
矯正治療はこの作業を繰り返しながら歯を少しずつ動かし、正しい歯列へと導きます。この地道な作業により歯を動かせるのは、ワイヤー矯正で最大でも1か月で1ミリと言われています。なおマウスピース矯正は一か月に動かす移動距離は0.25ミリに設定されており、ワイヤー矯正よりは移動距離が緩やかです。
なお歯が動くのは歯根膜がある天然歯のみであり、歯根膜がないインプラントは動かすことができません。
矯正治療後の歯はまだまだ不安定
矯正治療は全体矯正の場合は2~3年、前歯だけを動かす部分矯正でも6か月ほどかけて少しずつ歯を動かします。矯正治療終了後は綺麗な歯並びになりますが、歯は常に戻ろうとする性質があるうえ、矯正終了後は非常に不安定な状態になっています。指で歯を押すと歯が動いているのがわかることもあるため、こんな状態で大丈夫?と不安になることと思います。
矯正装置を付けて歯を動かす期間を動的治療と言いますが、動的治療が終了後の歯が揺れるのは自然な現象です。自分だけがおかしいのでは?というわけではありません。
全体矯正であっても部分矯正であっても、矯正後の歯は非常に不安定な状態のため、後戻りしないよう注意が必要です。そのためにはリテーナーの装着が欠かせません。医師の指示に従い、決められた時間は保定装置を付けて過ごす必要があります。矯正治療後の歯はやがて固定されますが、後戻りしないためにもリテーナーは付けておきましょう。
何年経っても矯正治療後の歯が揺れる・・・考えられる理由とは?
道的治療終了直後の歯が不安定なことは自然なことであり、リテーナーをきちんとつけることで歯の揺れはだんだんと治まってきます。
しかし何年経っても歯の揺れが収まらず、歯周病の検査などで動揺の数値が高い方は、他の理由があるかもしれません。考えられる理由を2つご紹介します。
1.もともと歯の根っこが短かった
歯の根っこの長さには個人差があり、中には根っこがやや短い方もいます。もともと歯の根っこが短めの人は矯正治療が終わったあとに歯根吸収が起き、歯が揺れやすくなる傾向があり、最悪の場合歯が抜けてしまう可能性もゼロではありません。矯正治療を始める前は必ずレントゲン写真を撮り、歯や顎の骨の状態などを確認しますが、その際に根っこが短いと確認された場合、歯にかける力を弱くする、短期間で歯を動かすようにするなど細心の注意が必要です。
2.歯周病が進行してきた
年齢を重ねるにつれて注意したいのが歯周病です。歯周病は歯周病菌によって歯を支える歯周組織に炎症が起きる病気で、進行すると歯槽骨が吸収され始めます。歯周病の兆候がありながら矯正治療を進めた場合、歯槽骨の吸収が進んでしまうことがあります。そうなると、動的治療で動かした歯がいつまで経っても安定せず、歯がグラグラになったままになる可能性が高くなります。
矯正治療後は注意が必要
矯正治療終了後の歯はどうしても元の位置に戻ろうとする性質のため、どうしても不安定な状態になります。また歯が揺れていると、固いものを食べるのも怖くなるとおもいますので、しばらくは食事等も気を付けて過ごしましょう。
やがてだんだんと歯は揺れなくなってきますが、もともと根っこが短い方、歯周病の方はより注意が必要です。特に歯周病の方は症状が進行して歯槽骨が吸収されてしまうと歯を支えることができなくなり、矯正とプラスされて歯が抜けてしまう恐れがあります。歯周病の方はしっかりと歯周病治療を行いながら、矯正できれいに整った歯並びを維持することを心がけましょう。
また歯根が短い方や歯周病の方に限らず、矯正治療や部分矯正を終えた後は必ず医師に指示に従ってリテーナーを付けるようにして下さい。
コラム監修者 :にしお歯科院長 西尾裕司
大阪大学歯学部を卒業後、医療法人江坂歯科医院に勤務、翌年院長に就任する。その後、大阪府の歯科医院にて 5年間勤務。その後、平成18年に「千里中央 にしお歯科(大阪府豊中市)」を開院。